鬼島くんは、相変わらず、他校生とケンカばかりしていると噂で聞いた。

そんな時だった。

私が、恐ろしい事を耳にすることになるのは‥‥‥‥。

「鬼島さん!!『女』に『ぶつかられた』って、本当ですか?」

ひと際、デカイ声で言っているのは、鬼島くんの舎弟だという『仲間俊太【なかましゅんた】』だった。

「アハハッ!!瑛ちゃん。どこの誰とも分からない、そのぶつかってきた『女』に逃げられちゃったんだって?」

笑いながら、そう言っているのは、鬼島くんの大親友だという『片桐麻人【かたぎりあさと】』だ。

「うるさい!!黙れ、麻人!!」

鬼島くんが、ギロッと睨み、そう言うが、片桐くんは動じず、

「瑛ちゃん、『桂ちん』からの電話に気を取られてて、『その子』、瑛ちゃんに『謝りもしない』で去っちゃうなんてなぁ。結構、『その子』、『大物』なんじゃない?ドジだなぁ、瑛ちゃん。」

えっ!?

ぶつかってきた『女』!?

『謝りもしない』で去っちゃった『女』!?

まさか、それって、私のことですか?

そう一瞬、考えて、ゾクリッとしたが、でも、大丈夫!!

私は、そう思っていた。

ぶつかった時、たぶん、私は『メガネ』をかけず、素顔だったのだろう。

だって、今の私は『おさげ髪』の『メガネ地味っ娘』だった。

気付かれていないっていうことは、そういうことだ。

良かった〜!!

それに、私は目立つ存在でもない。

だから、安心しきっていた。

だけど、あんな形でバレちゃうなんて、誰が想像できると思う!?