-魅斗side-



夕方の帰宅ラッシュ。


予想はしていたけど…もちろん満員電車。


球技大会の練習でいつもより帰りが遅くなった俺たち。


俺は、駅まで用事がある…なんてみんなに言ったけど、別に特に用事はないんだよね。


ただ俺が心配で、緋奈ちゃんを家まで送っていきたかっただけ。


緋奈ちゃんに一緒に帰ろうと誘うと快くOKしてくれたので、今は一緒に電車に乗っている。


けど予想以上に、車内が混みすぎていて。


そのせいで俺は今、緋奈ちゃんを抱きしめる体勢になっている。


車内が揺れて、人に押された衝撃で緋奈ちゃんの腰に腕を回してしまって。


車内は人がぎゅうぎゅう詰めで身動きが取れなくて、緋奈ちゃんから離れられない。


小さい体の緋奈ちゃんは、俺の胸の中にすっぽりと収まって、顔を埋めている。


…これは、不可抗力だ。


ああ、緋奈ちゃんの髪から甘くていい匂いがする。


…腰に腕が回っていると、緋奈ちゃん、やっぱり細いんだなとか。


体が密着していると…結構スタイルいいんだなとか。


そんなことばかり、考えてしまう…。


バカ、変なこと考えるな。俺。