鬼課長の憂鬱~謎めく可憐な美少女部下~

「私それ、初めて聞いたと思う」

「そりゃそうさ。初めて言ったんだから」

「それって、どういう……」

「まあ、その話は今度するから、今は詩織の事を考えないか?」

「うん、そうね、わかった。中学ね…… 仮にあんたが中3の時とすると、あの子は私達の8つ下だから……」


 野田は、マニュキアをした細い指を折って数える仕種をした。


「小学校2年、だわね」

「なるほど。子どもの8歳差って、結構デカいんだな。小2かあ。小さいなあ……って、あっ!?」

「どうしたの? 急に大きな声出しちゃって……」


 俺は思い出したんだ。と言っても中学の事じゃなく、職場での詩織と小島の会話を。他にも引っ掛かるものがあったが、まあ、それはいいか。


「詩織と小島が小学校の時、同じクラスだったって事は、言ったよな?」

「うん、聞いたよ。詩織ちゃん、小島君や他の悪ガキどもに虐められてたんでしょ? 可哀想に……」

「そうなんだ。で、それが2年の時の事らしいんだ。偶然だろうけどな」

「偶然、かなあ…… それはそうと、もしあんたが中学の時に詩織ちゃんと出会ってたとしても、どうしてそれを詩織ちゃんは言わないんだろう。その疑問は依然として残るのよね……」

「いや、それなら解るよ」

「え?」


 それなら解ると思った。詩織は心の優しい子だから、俺を気遣ってくれたのだと思う。