鬼課長の憂鬱~謎めく可憐な美少女部下~

「いい? 普通に考えてほしいの。一般的にというか、客観的にというか……」

「お、おお」

「あんたってさ、確かにいい男よ。実年齢より若く見えるし、顔立ちは綺麗だし、すぐ恐い顔するのが玉に瑕だけど、それでも十分ハンサムだと思う。いわゆるイケメンよ」

「いや、そんな事は……」

「謙遜はいいから。そこはスルーしてちょうだい」

「はい」

「でもね、世の中にはあんた程度のイケメンはごまんといると思うの。必死で探さなくても簡単に見つかるはずだし、仮に詩織ちゃんの理想が細かくて、あんたがそれにドンピシャだったとしても、あんたに出会った時の詩織ちゃんの反応は大げさ過ぎるでしょ? はっきり言って、異常と言ってもいいわ。
 だって、詩織ちゃんは見かけは若いけど32のいい歳した大人の女性なわけで、職場で普通、号泣とかする? しかも入社した初日に、2課のみんなが見ている前でよ。どう考えてもおかしいでしょ?」

「確かに……」


 言われてみれば確かにそうだ。俺は、詩織ってずいぶん泣き虫なんだなと思っただけで、その後は深く考えなかった。


 その時、俺と野田の間のカウンターに、マスターがサンドイッチが盛られた皿を置いてくれた。前にも食べた事があるが、今夜のもとても旨そうだ。だが、サンドイッチだけでなく、フルーツの盛り合わせも置いてくれた。けち臭い事を言うようだが、フルーツって結構高いのだ。


「これ、おまえが頼んだの?」


 フルーツを指さして野田に聞いたら、野田は「ううん」と顔を横に振った。


「マスター、これって……」

「サービスでございます」

「あ、そうなんですか? それはすみません」


 こんな事は初めてだし、マスターはすぐに横を向いてしまったから定かではないが、彼の顔が赤かったような気がした。


「それとね……」


 俺はカツのサンドイッチを口に頬張り、野田は細い指先で紅いイチゴを摘まみながら、詩織の話は続くのだった。