鬼課長の憂鬱~謎めく可憐な美少女部下~

「その顔は、思ってなかったって顔ね?」

「ああ。どこが変だった?」

「そうね…… まずは、今の話じゃないけど、なぜ詩織ちゃんはあんた……みたいな男を探していたのか、だわね」

「なんだ、結局はそれかよ。それなら不思議だって、俺だって言ってるだろ?」

「そうじゃないの。あんたがいい男とかそうじゃないとか、そういう事を言ってるんじゃないのよ」

「と言うと?」

「だってさ、あんたってそんなに濃いキャラ?」

「いや、濃くないよ。むしろ平凡だと思う」

「でしょ?」


 なんだよ、野田のやつ。結局は俺をバカにしたいだけか。

 俺はムッとしながら前を向き、水割りを口に含んだ。のだが……


「あんたはきっと……王子様なのよ」


ブッ


 俺は口に入れた水割りを、盛大に吹いてしまった。


「ちょっと、何やってんのよ?」

「お、おまえが……ゲホゲホ……急に変な事言うからだろ? マスター、すみません」

「いえいえ、いいんですよ」


 野田のやつ、てっきり俺をけなすと思ってたのに、変な事を言いやがって……

 何が“王子様”だよ。それって、夢見る女子のみなさんの憧れの的で、普通は褒め言葉じゃないのか? しかも最上級の。


「あんたが驚くのも解るわ。言った私も驚いたから。でもね、そう考えるとしっくり来るのよね」

「何がどうしっくり来るのか、ちゃんと説明してくれよ」

「わかった」


 俺はハンカチで口を拭い、野田は前を向いたまま水割りを口に含み、ゴクッとそれを飲んで小さく頷いた。その横顔は、まるで何かを確信したかのように、俺には見えた。