薄々、気付いていたからだ。俺は驚くよりも、むしろ、ああ、やっぱりそうかと思った。
詩織は、「私も結婚って興味ないんだ」と言った。だから俺に考え過ぎるなと。
あの時の詩織は、やれ家賃だの光熱費だのシェアだのと、いつになく饒舌だった。今にして思えば、あれは本当の気持ちを隠すための、詩織にしては精一杯の演技だったのだと思う。
いや、そうじゃない。なにが、“今にして思えば”だ。
俺はあの時の詩織に、はっきりと違和感を覚えていた。しかし俺は、あえてその違和感の訳を考えなかったんだ。詩織の言葉を鵜呑みにした方が、自分にとって都合がいいから。
なんて俺は卑怯な人間なんだろうか。人間なんてみな腹黒く、信用するに値しないと思ってきたが、まさか自分もその一人とは思ってなかったな。
さてと、俺はどうしたらいいだろうか。選択肢は3つ……いや、2つだ。
このままズルズル続ける事もありかと思ったが、それはない。俺のフラストレーションは、既に限界に達しているからだ。世の中には、秘密を隠し持つ事に快感を覚える者もいるかもしれないが、俺にはそんな趣味はない。
となれば、詩織と結婚するか、同棲をやめるか、その二つにひとつだと思う。
同棲をやめるという事は、事実上詩織を手放す事、つまり詩織と別れる事と同じだと思う。少なくとも、詩織はそう受け止めるはずだ。
詩織と別れるなんて事が、本当に出来るんだろうか……
それが出来ないなら、結婚するほかないわけで、答えは簡単、とも思えるのだが……
詩織は、今は俺を好きだと言ってくれているが、それはいつまで続くだろうか。いつか俺に愛想をつかせ、他の男と浮気をするのではないだろうか。
詩織が他の男に抱かれる事は想像もしたくないし、真理の時に味わったあの屈辱は、もう二度とごめんだ。それをするぐらいなら、今の内に手放した方がよっぽど気が楽かもしれない。
それは俺にも言える事だと思う。詩織と知り合ってまだ一ヶ月も経っていないのだ。今のところは一つもないが、先行き詩織の嫌な面に気付き、それが次第に増えたり、我慢出来なくなるかもしれないじゃないか。
その意味では、しばらくはこのまま同棲を続けて様子を見る、という選択肢を加えてもいいかもしれない。
ああ…… これでは堂々巡りだ。
俺はスマホを取り出すと、メールを書き始めた。宛先は、野田だ。
詩織は、「私も結婚って興味ないんだ」と言った。だから俺に考え過ぎるなと。
あの時の詩織は、やれ家賃だの光熱費だのシェアだのと、いつになく饒舌だった。今にして思えば、あれは本当の気持ちを隠すための、詩織にしては精一杯の演技だったのだと思う。
いや、そうじゃない。なにが、“今にして思えば”だ。
俺はあの時の詩織に、はっきりと違和感を覚えていた。しかし俺は、あえてその違和感の訳を考えなかったんだ。詩織の言葉を鵜呑みにした方が、自分にとって都合がいいから。
なんて俺は卑怯な人間なんだろうか。人間なんてみな腹黒く、信用するに値しないと思ってきたが、まさか自分もその一人とは思ってなかったな。
さてと、俺はどうしたらいいだろうか。選択肢は3つ……いや、2つだ。
このままズルズル続ける事もありかと思ったが、それはない。俺のフラストレーションは、既に限界に達しているからだ。世の中には、秘密を隠し持つ事に快感を覚える者もいるかもしれないが、俺にはそんな趣味はない。
となれば、詩織と結婚するか、同棲をやめるか、その二つにひとつだと思う。
同棲をやめるという事は、事実上詩織を手放す事、つまり詩織と別れる事と同じだと思う。少なくとも、詩織はそう受け止めるはずだ。
詩織と別れるなんて事が、本当に出来るんだろうか……
それが出来ないなら、結婚するほかないわけで、答えは簡単、とも思えるのだが……
詩織は、今は俺を好きだと言ってくれているが、それはいつまで続くだろうか。いつか俺に愛想をつかせ、他の男と浮気をするのではないだろうか。
詩織が他の男に抱かれる事は想像もしたくないし、真理の時に味わったあの屈辱は、もう二度とごめんだ。それをするぐらいなら、今の内に手放した方がよっぽど気が楽かもしれない。
それは俺にも言える事だと思う。詩織と知り合ってまだ一ヶ月も経っていないのだ。今のところは一つもないが、先行き詩織の嫌な面に気付き、それが次第に増えたり、我慢出来なくなるかもしれないじゃないか。
その意味では、しばらくはこのまま同棲を続けて様子を見る、という選択肢を加えてもいいかもしれない。
ああ…… これでは堂々巡りだ。
俺はスマホを取り出すと、メールを書き始めた。宛先は、野田だ。



