うーん、これは困ったな。

 俺はある問題に直面していた。あるいは気付いたと言うべきか。

 俺のいわゆる課長席と、高宮の席は離れ過ぎているのだ。これでは高宮を教育しづらい事この上ない。もちろん、他の者を高宮の教育係に変更するのは論外だ。

 と言っても俺の傍に空席はないし、見渡したところ空席は高宮の前だけだ。

 ちなみに、この課に限らず、各職場には空席がある、はずだ。数年前から経費節減の一環として、人員を削減しているからだ。高宮の配属は逆に人員増であり、最近としてはかなり稀なケースと言ってよい。

 なお、俺個人は人員削減には反対だ。短期的には経費節減になるが、中長期的には売上の減になり、会社そのものの活力が低下すると考えている。

 という事は置いといて、さてどうするかな。

 ん?

 なんだ、そうか。俺が高宮の前に座ればいいんだ。高宮が一人立ちするまでの間だけ。

 PCはノートだから向こうの席に持っていくのは簡単だ。問題は固定の内線電話だな。電話線を向こうまで伸ばすのは厄介だしなあ。

 ああ。確かここのビジネスホンは自動転送が出来るはずだな。しかし、どうやるんだったか……

 やはりプロに任せるか。という事で、


「森さん!」


 俺は片手を上げながら、大きな声で森さんを呼んだ。