湊は学校のカバンの中からマンガを取り出し、床に寝そべって読み始めた。



『髪の毛濡れたままじゃん。乾かさないの?』



『……だるい。自然乾燥』



『風邪引くよ?』



『じゃあ、おまえが乾かせよ』



『はぁ!?何様なのよっ?』



まったく、もう。

えらそうに。



『イテッ』



床に寝そべる湊の足を蹴ったあたしは、部屋を出て洗面所からドライヤーを持ってくる。



あたしは床に座り、湊の濡れた髪をドライヤーで乾かし始めた。



結局やってあげちゃう。



なんて優しいんだろう、あたしは。



てか、小さい頃からあたしが甘やかしたせいで、湊はこんなわがままになってしまったのかもしれないと最近思う。



『スン……スンスン……』



あたしは鼻をピクピクと動かして、匂いをかぐ。



湊の濡れた髪から、いい匂いがする……。



……って、違うわ。



『ちょっと!あたしのお気に入りのシャンプー使ったでしょ!?』



『うるせーなー。どれも同じだろーが』



『違うしっ!もぉ、これからは普段使ってるほうのシャンプー使ってよね?』



『あー、覚えてたらな』



もういい。



もうムカついた。



ドライヤーで湊の髪の毛、ボッサボサにしてやる。



『おい、バカ。もう少し優しくやれよ』



頭の血管……ぶちキレそう。