しばらくして、シャワーを浴びた湊が部屋に戻ってくる。



『おまえ、まだいたのかよ』



濡れた黒い髪をバスタオルで拭きながら、湊は床に座る。



『ホントにここで暮らすの?』



あたしが聞くと、湊はバスタオルを首からかけて、あたしの顔を見つめる。



『1年間な』



『で、でもさぁ~。ここで床に布団敷いて寝るよりも、自分の部屋にあるベッドの方が寝心地いいでしょ~?』



『あー、俺どこでも寝れるタイプだから』



……そうだね、知ってる。



どこでも寝れるタイプだよね、アンタは。



あーあ。

もう、あきらめるしかないのかぁ。



おじさんのバカー。



なんでシンガポールに行っちゃうのよぉ。



お仕事だから仕方ないけど、お土産ちゃんと買ってきてくれなきゃ許さないからねーだ。