「ごめん。俺...トイレ行ってくる」
近くにいた部員にそう告げると、シートを立ち人を避けながら目的もなく歩いた。
今はこの人混みも、自分の姿を消してくれているみたいでありがたく感じる。
「トイレ、そっちじゃないけど?」
けれど俺の耳にそんな言葉が聞こえ、その場に立ち止まった。
聞き慣れた声。
誰か確認しなくたって分かる...
「別に翼に関係ないだろ」
「へぇー。なしてそんなに怒ってるわけ?」
なして怒ってるか?そんなの...自分が嫌なだけ。
未菜のこと諦めるって決めたのに、いざ翼と未菜が仲良く2人でいる所を見ると無性にイライラする。
そんなことにイライラしている自分が惨めで、こんな自分に腹が立つ。
「関係ないし。怒ってない」
翼になんて怒ってない。
それに、幸せな翼に追求されたくない。
だけど、
「関係なくないね」
翼は俺を突き放したりしなかった。


