Rain

つかの間の間だったけれど、何だか先生と同級生の友達になれたような気がして嬉しかった




そんな時だった

コンコンと部屋をノックする音と共に声が聞こえた

「雪平先生、ちょっと宜しいですか?」

その声が聞こえたと同時に、先生は今まで見たことも無いような早さで、慌ててパソコンから顔をあげ、外には聞こえないような小声で言った

「やべっ!本條隠れろ!」

先生にそう言われ、私は促されるままに先生のデスクの下に隠れた

私が隠れたのを確認すると、先生は何事もなかったかのように平静を装って「どうぞ」と言ってドアを開けた




「雪平先生、この書類のここなんですが…」


入ってきたのは男性教師だった

机の下にいるので、誰かまでは分からなかったが声で分かった

誰かという所まで分からなかったという事は、普段は私達とは関わりのない他学年の先生なのだろう



下に私がいるとは知らない男性教師は淡々と話す

「ここの点なんですが、これはどういう事なんでしょう?」


「あぁ、これは―――」

その男性教師に対して、先生もまた淡々と返す


でも、私には二人が何を話しているのか、さっぱり分からない

話が聞こえないんじゃなくて、話の意味が分からない


さっきは先生に少し近付けた気がしたけれど、こういうのを目の当たりにすると、やっぱり私達は大人と子供で、しかも先生と生徒いう近くて、けれども凄く遠い存在なのだと実感させられる


私の眼前に伸びる先生のズボンからは、香水の匂いに混ざって微かに煙草と珈琲の匂いがした


その匂いは、ますます私に、先生と生徒との距離を感じさせた