Rain

「…別に居たきゃ、もっと居ても良いんじゃないか?…どうせ1限目は自習だし」

…自習…
実は、それが私にとって、今日一日の中で最も憂鬱な時間だった
先生が誰もいない中で、一時間も愛実達と同じ教室で授業を受けなきゃいけないなんて何されるか分からない、まさに地獄だ
だから、先生の申し出はありがたい以外の何物でも無かった
でも、教師なのに当たり前のようにサボれという先生の言葉に何だか可笑しくなってきて、私はクスッと笑いながら言った

「…先生なのに生徒にそんなこと言って良いんですか?」

すると、先生は相変わらず作業をしながら淡々と答えた

「…別に……他の先生方は知らないけど、少なくとも俺は生徒を苛めるために教師やってる訳じゃないから。
やる気のない生徒には厳しくするけど、嫌がる生徒を無理矢理、引き摺ってまで教室に押し込む気はないよ」


私は、そんな先生の言葉に、不覚にもドキッとしてしまった



…また助けてくれた

「…ありがとうございます」
私は小さく笑って、そう言った
今回は、昨日の気に入られる為に言った適当なお礼とは違って、素直にその言葉が出てきた

私がそう言うと、先生は少し照れたように目をそらし、小さく言った

「…別に……ていうか俺も高校時代、よくサボってたし……それに、そういう事が出来るのが学生時代の特権でしょ。
流石に、俺が何かあったからって授業サボる訳にはいかないし」

そう言って小さく笑った

そういえば、先生の笑った所を見たのは、これが初めてかもしれない

私は、何故か心臓の高鳴りを止めることが出来なかった

私は、先生にその音が聞こえてしまわないように、平静を装って話した

「で、でも、何で先生は、高校時代にはサボってばっかりだったのに高校教師になろうと思ったんですか?」