Rain

大急ぎで顔を洗い、お母さんが焼いたトーストを口に運びながら、ふと疑問に思った事を聞いてみた

「ねぇ、お母さん、何で私の名前は『美雨』になったの?」

するとお母さんは、うんざりした顔をしながらも答えてくれた

「何なのよ、この忙しい時に…………あんたの名前はね…お父さんが決めたのよ。

あんたが産まれた時、丁度雨が降っててね……でも、その雨は通り雨で、どしゃ降りだったのにも関わらず、空は真っ青で、太陽もさんさんで、雨の粒が太陽の光で一粒一粒キラキラ光ってて、それはそれは綺麗だった。
そんな雨を見て、お父さん、こう言ったの。
『何て綺麗な雨なんだ……こんな綺麗な雨の日にこの子が産まれたなんて……僕は、ずっと雨が嫌いだった。でも今日はこの子が産まれた記念すべき日だ。僕は今日、大嫌いだった雨が大好きになったよ………この子には……この雨みたいな子になって欲しい。今まで大嫌いって言ってた人間にまでも大好きになってしまったって言わしめるような、この美しい雨のように愛される子に』って。

それで美雨になったのよ」

お母さんは言い終わると「遅刻しちゃう!美雨、戸締まりとテレビよろしくね!」と言って、慌てて家を出ていった







お母さんがいなくなった家で私は、1人考えていた

私の名前が『美雨』になった理由

お父さんが、私がきっかけで雨が大好きになったから


大好きなお父さんが、私が理由で、私の大好きな雨を好きになってくれたという事は、凄く凄く嬉しい事だった

お父さんの願い通り、これから『私と知り合った事で雨が好きになったって』言ってくれる人が沢山現れればいいな




…そういえば

私が先生の事を好きになったのも、もしかしたら高校教師だったお父さんがきっかけだったのかもしれないね


そう思うと、何だか可笑しくて、私は、誰もいない家で、1人クスクスと笑った