Rain

お父さんは自分が病気で余命幾ばくもないと言われた時、私を枕元に呼んだ

当時、お父さんの病状がそんなに重いなんて夢にも思っていなかった私は、ずっと面会させて貰えなかったお父さんに会えて無邪気に大喜びしていた記憶がある

そんな私の目を見ながら、お父さんは言った

「……美雨、強くなりなさい。
どんなに辛い事があっても、追い詰められても負けない強さを持ちなさい………もしも、それでも耐えきれない事が起こったら……


まずは一歩引いて、深呼吸しなさい。

そして冷静に周りを見るんだ。

そうしたら、そこには必ず美雨の味方の人がいる筈だ。

…お母さんだって、口下手な人だから、口に出して言う事は無いかもしれないけれど、本当は誰よりも美雨の事を思っている。
…それに父さんだって。
父さんだって美雨の味方だ。
どんな時だって………例え、父さんがお空の上に行っても、ずっとずっと美雨の味方だ。
ずっとずっと美雨の事を見てる」

「…お父さん、お空の上に行っちゃうの…?」

心配そうに聞いた私に、お父さんは慌てて、取り繕うように言った

「い、いや例えだよ。
でもな、今は父さんは、こうやって、ここにいるけれど、父さんもお母さんも美雨よりも30歳近くも年上なんだ。
だから、きっと美雨よりも早くお空に行く事になると思う。
その時に……父さんやお母さん以外の他の誰かに愛される人になりなさい。
そうなるのは簡単だ。
弱い人、困っている人を助け、悪を許さない。
優しく、強い人間になるんだ。
そして決して、人に背を向けて生きなきゃいけなくなるような事はするな」

そう言ってお父さんは満面の笑みで、私の頭をクシャっと撫でた






それから間もなくだった






お父さんが亡くなったのは







お父さんは亡くなるその時まで、ずっと笑っていた