Rain

先生の足の早さなら、怪我した三沢を追いかけて捕まえる位、訳もないだろう

でも私は、先生にここを離れてほしくなかった

今、この状態で一人にしないでほしかった





裾を掴まれて、先生は一瞬驚いたような顔をしたけど、私の縋るような目を見ると、悔しそうに倉庫の出口を見て、私の方に向き直った。
そして、しゃがんで私に自分の着てたコートをそっとかけてくれた

先生のコートからは、先生の煙草と珈琲と香水が入り交じった匂いがして、気が付くと私の目からは涙が溢れていた


そんな私を見て、先生は、さっき三沢を逃がした時よりも、もっと悔しそうな顔をして呟いた

「…すまない……俺のせいだ……」

先生が発した予想外の言葉に、私は思わず「…えっ?」と呟いた

「…今日……放課後、三沢が職員室に退部届提出しに来た時、明らかにおかしかったんだ。
何て言うか……生気がないというか……全てがどうなっても良いっていうか……そんな感じの何も感情がないような絶望しきった目をしてた…………
それで気にはなってたんだけど……
そんな矢先に帰ろうとして、駐車場に向かって歩いてたら、君と三沢がここに向かってるのが見えて……
その時の三沢の目が普通じゃなかったから、気になって来てみたら、こんな事に……
俺がちゃんと見てれば……こんな事にはならなかったのに……本当にすまない……」

先生はそう言って深く頭を下げた