正しく突然のフラッシュバック。小学生の頃、この公園で金髪の男の子に出会った。
 名前でからかわれた私は一人ぼっちで黄昏時の公園にいて、そこに金髪の男の子がふらふら歩いてきた。
 膝をすりむいて、痛そうに、悔しそうにしていたその子と目があって、私は思わず聞いたのだ。

『タカヒコにやられたの?』

 タカヒコとは、私をトイレの妖怪扱いしていじめてくれていたクラスの乱暴者で、
 この公園辺りでも弱虫や変わった子をみつけてはいじめて遊んでいた。
 きっと、この髪の色で何か言われたんだ、と確信した私はさらに勢い込んで言ったのだ。

『あのね! これあげる! 私の宝物だけど、これ貼ったら痛いの治るよ!!』

 男の子の金色の髪は、夕焼け色に照らされて凄く綺麗だった。何故今まで忘れていたのだろう。

『あ、ありがとう……』

 そうおずおずと礼を言って絆創膏を受け取ったその子はそう、間違いなく『カシ』と名乗ったのだ。
 ――つまり、カシ君は十年以上、全く歳をとっていない。

「……――そっか。ごめん、忘れてた……私が、あげたんだよね。あの絆創膏……」

『私、はなこ。すずきはなこよ』

『ハナコちゃん。僕、カシ』

 そのはにかんだ様子の眩しい笑顔に、自分の名前が特別になった気がしたのだ。そんな大切なことすら忘れていた。

『『またあした』』

 そう言って別れた次の日から、私はこの公園に来ることを禁止された。
 ――その理由はおそらく、帰りが夕方遅くなったからではない。

「うん! ハナコちゃんがくれたんだ。ハナコちゃんおっきくなってて、全然気付かなかった!」

 ぱあぁ、と嬉しそうな笑顔全開でカシ君が言う。毎日、待っていてくれたのだろうか。
 渡した絆創膏を使わず、大切に宝物にしていてくれたのだろうか。
 そう思うと嬉しくて、私はこの状況を喜ぶべきか恐れるべきか一瞬見誤った。