「颯さん!待ってください!」
「お前も……俺なんかの下で働くのは
心底嫌なんだろう」
「っ!?」
図星をつかれたせいか
目の前の男は驚きを隠せていない
自嘲気味に笑う俺に
他人を気づかう優しさなんてのは無い
こんな自分も
あの人たちも
世の中も
全てが憎くてたまらない
「じゃあな」
それだけ伝え
結局一度も、振り替えることなく
俺は足をすすめた
俺の声が届いたかまでは
確認するまでもない
今思えば、俺の選択は
間違っていたのかもしれない
このときの俺はまだガキで
周りのことなんて考えてなかったんだ
蒼空を傷つけているとも知らずに
俺は自分の我が儘を押し通した

