「こちらのスーツが蒼空様の 仕事着になります」 黒一色のスーツとシャツは 動きやすいように 普段のものよりも 柔らかい生地で出来ている 重さもほとんどないはずなのに これを着てしまうと 目に見えないなにかを 背負った感覚になる 震えた手で受け取った彼女は 気まずそうに俺に 視線をやる ああ… 「失礼致します」 彼女の頬をほんのり赤く 染まっていることに気づき 俺がいることで 着替えられないのだと悟る その姿はやはり 普通の女の子で 俺はそんな姿を 目にするたびに 苦しくなる