言えない恋心


「いっ、行かないわ」

 行けるわけがないじゃない!!

 だってわたしはこのハウリング家の教育係の継母のおまけみたいなものよ。

 どうやっても伯爵のご子息であるヒースとは釣り合わない。

 ヒースとは立場が違うもの。



 わたしは悲しい気持ちをなんとか押し殺し、ヒースから顔を逸(そ)らした。

 そうして仕事の続きに取りかかる。



 すると、ヒースから放たれる空気は重くなった。

 堅苦しい空気が彼からひしひしと伝わってくる。



「ロズ、また草むしりをやらさているのか? ここは庭師に頼んでいるから放っておいてもいいんだよ。わざわざ君がする仕事じゃない」


「いっ、いいの。退屈凌ぎになるわ」


 おかしな気持ちを抱かずに済むもの。


 ヒースがわたしに気があるなんて、間違ってもないことなのに、どこかで期待している自分がいるの。

 小説に登場する主人公のように、わたしも……って。