これで終わり。
ヒースと過ごした短くて夢のような時間はこれで終わり。
今日のことは全部、嬉しい夢として胸の奥にしまって生きていこう。
この思い出があれば、どんなに辛い日が来てもきっと生き抜いていける。
「待って!!」
わたしを呼び止めるヒースの声が背後から聞こえる。
ああ、だけど周りにはたくさんの人だかり。
きっとあの中に、ヒースとお似合いな女性(ひと)がいるだろう。
背中から聞こえてくる黄色い声に耳を傾けながら、わたしは走って広間を出た。
ああ、胸が痛い。引き裂かれそうなほど苦しい。
無事、部屋に戻ることに成功したわたしはベッドの下に綺麗なドレスを隠し、それからベッドに倒れ込んだ。
目頭は熱を持ち、失恋という悲しみの涙があふれた。
小さな部屋にひとつしかない高いところにある窓から見える月だけがわたしを照らし、優しく宥(なだ)めてくれた。



