彼を見つめると、ヒースはにっこりと微笑み、わたしの腰を支えるだけの力が手に加えられる。
彼はわたしを目と鼻の先まで引き寄せた。
「そうかもしれない。君はとても魅力的だから……」
高鳴る胸の鼓動は治まらない。
ヒースは今、間違いなく、わたしを恋愛対象として見ている。
皆に認められ、しかもヒースに見つめられる優越感。
それが今、たしかにあった。
……ねぇ、ヒース。
貴方を魅了している目の前の女性はわたしよ?
気づいて。
でも、気づかないで。
ふたつの相反する想いが交差する。
――だけどああ、もう時間。お義母様たちに気づかれないよう、部屋に戻らなくては!!
柱時計は午前零時を指していた。
わたしはヒースの骨張った大きな手から自分の手を抜き取ると、出口に向かって一目散に走った。
「待って、どこに行くの?」
「さようならっ!」



