言えない恋心


 自分が想像していたよりもずっと圧倒的な場面に打ちひしがれ、元来た道を戻ろうとした時だ。


「美しいお嬢さん、一曲、踊っていただけませんか?」


 いつの間にやって来たのだろうヒースは、長い階段の一番上にいるわたしよりも二、三段ほど低い位置に立ち、手を差し伸べて深くお辞儀をしていた。


 彼は漆黒の礼服に身を包んでいて、いつもすごく凛々しいのだけれど、今夜はいつも以上にとても素敵。


 わたしは彼が誰だかすぐにわかったけれど、彼は違うみたい。

 ヒースはただ、わたしに手を差し伸べ、目尻を下げて微笑んでいる。


 相手が誰だかわからないくらい、このドレスとティアラがすごく綺麗なのでしょうね。

 エメラルドの瞳には今のわたしが令嬢のようにでも写っているのかしら。いつも以上に優しい笑みを浮かべているわ。



 相手が令嬢だと、彼はこんなにも優しい表情をするのね。