懸命な説得にも応じないわたしに諦めたのか、ヒースは背を向け、去っていった。
芝生を踏む乾いた足音が遠ざかっていく。
できることなら、わたしもヒースの横に立ちたいと思っている。
彼から降り注がれる視線を一心に受けるのはとても心地良いわ。
――けれど、わたしは今夜ひらかれるパーティーの意図を知っている。
ヒースの誕生日会はもちろんだけれど、それ以上に彼に相応しい未来の花嫁を探すのが目的なのよ。
――そう。
わたしはヒースに惹かれている。ひと目見た時からずっと、あのエメラルドの瞳に恋をしていたわ。
思ったことを言って、優しくて、頭も良くて、誰とも社交的なヒースに恋している。
だけど、使用人のわたしが抱いていい感情でもないことは知っているわ。
彼の傍にいたいなら、恋心は秘密。
一生このまま、ずっと隠し通さなければならない。



