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「ロズ、貴女いったい床を拭くのにいつまでかかっているの! ほんとにグズね」


「もっ、申し訳ございません」


「まったく、とろくさいわね。その床ふきが終わったら、庭の草むしりよ? ほんと、のろまなんだから」


 廊下の床を拭いているわたしの頭上から金切り声で怒鳴ってくる、ブルーのドレスを着た目つきが悪い彼女は、継母のカルメ。


「のろまなロズ、さっさと仕事なさいな~」

 そしてばい菌のようによけて、くすくすと嘲(あざけ)りながら横切る、グリーンのドレスを着た極端に細すぎる体型の彼女はカルメの連れ子の長女、ミレーネ。


「ほんと、のろま~」

 耳元で嫌味たっぷりに話しかけてくるイエローのドレスを着た小太りの彼女は、やっぱりカルメの連れ子で、次女のジャネット。

 その人たちが、今のわたしの家族だ。


 本当の家族は――母は病で、父はカルメと結婚をした後、まるで母の後を追うようにして馬車の事故で亡くなってしまった。