クリスは今、横になっていた。

顔からは血の気が引き、貧血状態。

『血が、足りない。』

クリスは、そう言っていた。

どういうことなんだろう?

クリスは、『血を飲んでいなかった』のか?

なぜ?

私が、そんなことを考えていた時、

「陽菜。コイツとは、一体、どういう知り合いなのさ?」

佳那汰が、突っ込んで聞いてきた。

なぜか、佳那汰は、クリスを警戒している様子だ。

そこへ大和が割って入ってくる。

「今は、そんなこと言ってるより、医者を呼ばないとな!!」

と、大和がそう言う。

大和なりに、クリスを心配してくれているのだろう。

だが、私は困った。

クリスの『貧血』は、『病気』じゃない。

医者に見せたところで、治るはずもなかった。

だって、クリスは『ヴァンパイア』なのだから‥‥‥。

「‥‥だっ、大丈夫だよ。一日寝てれば、治るわよ、きっと‥‥‥。」

「そうか?そういうものなのか?」

大和は、妙に納得した様子で頷く。

だが、佳那汰は、

「陽菜と、その得体の知れない『男』と、朝まで二人っきりにしておく気なの、大和?」

と、抗議の声。

大和は、肩をすくめると、

「分かった。俺はとりあえず、春日を家まで送って行って、また、戻ってくる。それまで、陽菜のこと、よろしくな。」

「大和、分かった。」

佳那汰は、妙に張り切った様子で、そう返事した。

大和は、佳那汰にそう言うと、春日を家まで送るために、私の部屋を出た。

私の部屋には、私と佳那汰と、ベッドに横たわるクリスの三人だけ。

その時、佳那汰が驚くべきことを口にする。

「ねぇ、陽菜。コイツ、『ヴァンパイア』なんじゃないの?」

私は驚きの表情で、佳那汰を見やった。