夜、哲平から電話が鳴る。
「はい」
「あー、俺」
「うん」
「今度の日曜、どっか行かない?」
「いいよ。どこ?」
「海行くか?」
「うん」
「じゃあ、日曜は空けとけよ!」
「うん!」
「明日又電話するよ」
哲平からの電話は、いつもこんな感じで短い。
学校に行けば、普通に生活をしているだけで毎日会えたのに……。
夏休みは長くてつまらない。
日曜に着る水着を探して、部屋で着替えてみる。
変じゃないよね?
きっと女の子はこうやって綺麗になるんだなと、なんとなく思った。
そして日曜日。
「行ってきます」
「出掛けるの?」
「うん」
そう言って、家を出て傘をさした。
そう……。
せっかく海に行く約束だったのに、外は雨。
待ち合わせ場所に行くと、そこにはガッカリした哲平の姿があった。
「雨だね」
「やまねぇかな……?」
哲平はまだ海が諦めきれないみたいだ。
「どこ行くの?」
「ゲーセン」
「……ゲーセンってなに?」
初めて聞く名称だけど。
「……嘘!?行ったことないの?」
「うん」
「お前、本当にお嬢だな」
私と哲平は並んで歩くけど、傘が邪魔で上手く歩けない。