【短編】さよならとフルーツタルト

ベターか。ドラマか。


そんな突っ込みを入れてみたいが、涙が邪魔をする。


走りながら、

「あんなことして、」

大丈夫なはずがない。


「だって思いつかなかったし。ムカついたし」

殴り殺そうかと思った、と物騒なことを言う。


ずいぶん走ったところで、巧真が立ち止まった。

ケーキ屋にずんずん入っていく。


「待ってて」

ここはドラマ調にならないのか。

凄まじい視線を受けながら待っていると、程無く巧真は箱を持って出てきた。

「はい」

「え?」

「開けて」

何なんだろうと訝りながら箱を開ける。


「フルーツタルト?」

何で?と顔を窺う。

「ウエディングケーキ」

「えと、誰の?」

巧真は目を泳がせた後、そっぽを向いた。



「…俺たちの」


「何、言ってんの…バカじゃないの…っ?」



嗚咽混じりに笑った。


ケーキが、キラキラと輝いている。