「最初からやり直せるかな、百合子姫と私。」
「……姫はもうよしたら?奥方どの。百合子が嫌がるよ。」
「わかった。てか、何で『奥方どの』?」
恭兄さまはニッコリと悪戯っ子のように笑った。
「せっかく結婚したから、どの呼び方が一番しっくりくるか試してるところ。あなたも色々試してごらん。いつまでも『兄さま』だと義人くんも嫌だろうし。」
……兄が嫌がってることはちゃんと知ってるのね。
「じゃあ、ご主人さま?」
「……昨今は、違う意味に取られちゃうよ。」
「旦那さま?」
「似合わないね。」
「殿さま。御前(ごぜん)。めんどくさいし、ええわ。恭……さまは何で百合子さまに厳しかったの?私に対してと全然態度違ったやん?」
「さあ?覚えてないけど僕も子供だったんじゃない?あいつ、つんつんしてたし。」
……今も子供のようですが。
「ふうん。たぶんそれも一因やと思うけど。百合子さまと私との距離の。」
私がそう言うと、恭兄さまは苦笑した。
「らしいね。義人くんから聞いた。あと大学も?僕らと差がついたと思ってるみたい。」
「気にしなくていいのに。」
私がそう言うと、恭兄さまは頷いた。
「そういうこと。百合子とあなたがお互いに感じてる劣等感は、本人以外にとっては全然どうでもいい話だと思う。」
だからわだかまりをといて早く仲良くなってね、と恭兄さまがプレッシャーをかける。
今はまだ考えるだけで緊張する気がする。
でも、たぶん大丈夫。
毎日のように碧生(あおい)くんは百合子さまの情報を浮かれた脳からだだ洩れにしてるけど、私はそれを好ましく聞いている。
大好きな恭兄さまの従妹で、私と半分姉妹。
仲良くなれないはずがない。
いつかは。
12月、私は天花寺の令夫人として晩餐会デビューを果たした。
と言っても、元新華族の政治家主催。
恭兄さま的にはお断りしてもいいレベルだったらしいが、私の場馴れの為に連れてってくださった。
とにかく美しく装い、控えめに両隣のかたのお話をうかがい、行儀よくいただけそうなものだけ口にした。
……正装して華やかだけど苦行かも。
帰り道、車を運転しながら恭兄さまがため息をついて歎いた。
「もう少し文化水準の高い集まりじゃないと、行く意味ないね。予想通り豪華なだけの会だったね。」
「珍しく辛口やね。」
「ごめん。」
恭兄さまがなぜか謝る。
「つまらない時間を過ごさせた。」
その言葉で、今夜の緊張やストレスが全て報われる。
「ううん、うれしかった、一緒に来られて。ちゃんと令夫人できてた?」
「ああ、がんばったね。おいで。」
恭兄さまはわざわざ車を路肩に停めてから、私をふわりと抱きしめて首の後ろに口づけた。
むっ!またキスマーク付けてるな!
「……姫はもうよしたら?奥方どの。百合子が嫌がるよ。」
「わかった。てか、何で『奥方どの』?」
恭兄さまはニッコリと悪戯っ子のように笑った。
「せっかく結婚したから、どの呼び方が一番しっくりくるか試してるところ。あなたも色々試してごらん。いつまでも『兄さま』だと義人くんも嫌だろうし。」
……兄が嫌がってることはちゃんと知ってるのね。
「じゃあ、ご主人さま?」
「……昨今は、違う意味に取られちゃうよ。」
「旦那さま?」
「似合わないね。」
「殿さま。御前(ごぜん)。めんどくさいし、ええわ。恭……さまは何で百合子さまに厳しかったの?私に対してと全然態度違ったやん?」
「さあ?覚えてないけど僕も子供だったんじゃない?あいつ、つんつんしてたし。」
……今も子供のようですが。
「ふうん。たぶんそれも一因やと思うけど。百合子さまと私との距離の。」
私がそう言うと、恭兄さまは苦笑した。
「らしいね。義人くんから聞いた。あと大学も?僕らと差がついたと思ってるみたい。」
「気にしなくていいのに。」
私がそう言うと、恭兄さまは頷いた。
「そういうこと。百合子とあなたがお互いに感じてる劣等感は、本人以外にとっては全然どうでもいい話だと思う。」
だからわだかまりをといて早く仲良くなってね、と恭兄さまがプレッシャーをかける。
今はまだ考えるだけで緊張する気がする。
でも、たぶん大丈夫。
毎日のように碧生(あおい)くんは百合子さまの情報を浮かれた脳からだだ洩れにしてるけど、私はそれを好ましく聞いている。
大好きな恭兄さまの従妹で、私と半分姉妹。
仲良くなれないはずがない。
いつかは。
12月、私は天花寺の令夫人として晩餐会デビューを果たした。
と言っても、元新華族の政治家主催。
恭兄さま的にはお断りしてもいいレベルだったらしいが、私の場馴れの為に連れてってくださった。
とにかく美しく装い、控えめに両隣のかたのお話をうかがい、行儀よくいただけそうなものだけ口にした。
……正装して華やかだけど苦行かも。
帰り道、車を運転しながら恭兄さまがため息をついて歎いた。
「もう少し文化水準の高い集まりじゃないと、行く意味ないね。予想通り豪華なだけの会だったね。」
「珍しく辛口やね。」
「ごめん。」
恭兄さまがなぜか謝る。
「つまらない時間を過ごさせた。」
その言葉で、今夜の緊張やストレスが全て報われる。
「ううん、うれしかった、一緒に来られて。ちゃんと令夫人できてた?」
「ああ、がんばったね。おいで。」
恭兄さまはわざわざ車を路肩に停めてから、私をふわりと抱きしめて首の後ろに口づけた。
むっ!またキスマーク付けてるな!



