チャイムが鳴ったので、佐藤くんに立つように促す。
彼は渋々立ち上がり、私の隣に座った。
「……何で?」
わざわざ隣に座ったことに対してそう言ったつもりだったのだが、佐藤くんはそう取らなかったらしい。
「好きだからに決まってるだろ。あーあ。できちゃった婚?」
私は慌てて否定した。
「違います!」
……てか、どさくさに紛れて、好きって言われた。
「そっか〜。婚約者か〜。それで天花寺氏の、あの態度なわけか。あ〜あ。」
「あの……講義始まってるから、静かに……」
「……くそ〜。そっか〜。」
佐藤くんはしばらく、ぶつぶつ言いながら落ち込んでいるようだった。
私は気になって、その日の講義が全く頭に入らなかった。
2限が終わると
「飯、食いにいこ。」
と、佐藤くんに誘われた。
普段はお弁当を作ってくることが多いのだが、夕べのどさくさで準備をせずに寝入ってしまったので、今日は手ぶら。
「はあ。」
いつの間にか立ち直ってる佐藤くんに驚きながらも、私は引っ張られるままカフェテリアの上のダイニングへ行った。
佐藤くんは、専らここを利用しているらしい。
「由未、ここ、はじめて?」
……呼び捨てになった!
あんかけチャーハンのスプーンを口に運ぶ手をとめて、しげしげと見つめる。
「うん。いつもお弁当やし。……てか、佐藤くん、フレンドリーやねえ。どんどん呼び方が変わってく。」
佐藤くんは、豚しょうが焼き定職を美味しそうに食べながら首をかしげた。
「ん?もしかして、『由未』って呼ぶのは婚約者だけ?とか、言う?」
「ううん、そんなことはないけど。兄とか年上の友人もいるし。」
……恭兄さまは、いまだに呼び捨てにしきれず、「ちゃん」付けも交じってるけど。
まあ、かくいう私もいつまでたっても、「兄さま」をやめられない。
「じゃ、いいじゃん。俺、『えれい』で育ったからさ−。友達にいちいちまだるっこしい『さん』とか『ちゃん』とかめんどくさいじゃん。」
「え、れい……?」
「ロサンゼルス。」
エルエイ(LA)か!
「発音、綺麗すぎてわからんわ。ロスか〜。」
「……なんかオヤジと話してみるたい。『ロス』って略すの日本だけだぜ。スペイン語の定冠詞でしかないし、海外では通じない。」
オヤジ……。
「さっき『好き』って言われたのに、あっさり『友達』になって、今度は『オヤジ』て。」
私は苦笑した。
佐藤くんのペースについて行けない。
「残念?じゃ、友達キープしながら、いずれ略奪愛目指す?」
そんなふうに冗談めかして言いながら、佐藤くんは財布から名刺を出して、私に差し出した。
彼は渋々立ち上がり、私の隣に座った。
「……何で?」
わざわざ隣に座ったことに対してそう言ったつもりだったのだが、佐藤くんはそう取らなかったらしい。
「好きだからに決まってるだろ。あーあ。できちゃった婚?」
私は慌てて否定した。
「違います!」
……てか、どさくさに紛れて、好きって言われた。
「そっか〜。婚約者か〜。それで天花寺氏の、あの態度なわけか。あ〜あ。」
「あの……講義始まってるから、静かに……」
「……くそ〜。そっか〜。」
佐藤くんはしばらく、ぶつぶつ言いながら落ち込んでいるようだった。
私は気になって、その日の講義が全く頭に入らなかった。
2限が終わると
「飯、食いにいこ。」
と、佐藤くんに誘われた。
普段はお弁当を作ってくることが多いのだが、夕べのどさくさで準備をせずに寝入ってしまったので、今日は手ぶら。
「はあ。」
いつの間にか立ち直ってる佐藤くんに驚きながらも、私は引っ張られるままカフェテリアの上のダイニングへ行った。
佐藤くんは、専らここを利用しているらしい。
「由未、ここ、はじめて?」
……呼び捨てになった!
あんかけチャーハンのスプーンを口に運ぶ手をとめて、しげしげと見つめる。
「うん。いつもお弁当やし。……てか、佐藤くん、フレンドリーやねえ。どんどん呼び方が変わってく。」
佐藤くんは、豚しょうが焼き定職を美味しそうに食べながら首をかしげた。
「ん?もしかして、『由未』って呼ぶのは婚約者だけ?とか、言う?」
「ううん、そんなことはないけど。兄とか年上の友人もいるし。」
……恭兄さまは、いまだに呼び捨てにしきれず、「ちゃん」付けも交じってるけど。
まあ、かくいう私もいつまでたっても、「兄さま」をやめられない。
「じゃ、いいじゃん。俺、『えれい』で育ったからさ−。友達にいちいちまだるっこしい『さん』とか『ちゃん』とかめんどくさいじゃん。」
「え、れい……?」
「ロサンゼルス。」
エルエイ(LA)か!
「発音、綺麗すぎてわからんわ。ロスか〜。」
「……なんかオヤジと話してみるたい。『ロス』って略すの日本だけだぜ。スペイン語の定冠詞でしかないし、海外では通じない。」
オヤジ……。
「さっき『好き』って言われたのに、あっさり『友達』になって、今度は『オヤジ』て。」
私は苦笑した。
佐藤くんのペースについて行けない。
「残念?じゃ、友達キープしながら、いずれ略奪愛目指す?」
そんなふうに冗談めかして言いながら、佐藤くんは財布から名刺を出して、私に差し出した。



