trick or KISS―キスしてくれなきゃイタズラしちゃうぞ








満面の笑みでそう言うと、陸くんは一回固まってから


ドアをそーっと閉めだした。




「えっ、なんで閉めるの!?」


「なんで…来たんだよ…」



「だめ………だった?」





陸くんは付き合ってからも人混みが嫌いって

デートはあまり乗り気でない。



それに、学校であってもどこかよそよそしい。




ベタベタしたいってわけじゃないけど……




もうちょっと陸くんとカップルらしいこともしたい。




だけど…………



そう思ってるのはやっぱり私だけ…なのかな………?




そう思うとなんだか視界がにじんできて



「ごめん……帰るね………」




そう言って私は背を向けた。











………はずだった。







道を戻ろうとしたはずなのに




私の手首はがっしりと


陸くんに掴まれている。





「陸…くん……?」




「べ、別に、帰れって言ってるわけじゃ、ないから。」



「じゃあ、いてもいいの?!」



思わず笑みがこぼれると




「好きに…すれば……」


陸くんは顔を背けてそう言うと


家の中に入っていった。