(6)







あんな出来事があったせいで。




いつもだったら羽根が生えて、

飛び上がってしまう位に

嬉しいはずの放課後の音楽室も、



心から素直に喜べ無かった。







隣りで歌詞を、真剣に考えている篤司君は、


やっぱり、カッコいいけれど、




何だか、

いつもより遠い存在のように感じた。








「ん?どうかした?」







気付いたら私は、

篤司君の顔を、じっと見つめていた。



篤司君は、

私を不思議そうな顔で見てきた。







「あ、ううん!何でもないよ。」





慌て首を振った。






そんな私に…。

篤司君は、目を細めた。







この顔。

篤司君は、

たまにこうやって、

目を細めて私を見るんだ。






その目は、

まるで、嘘を見抜かれてるようで、


”ドキッ”とする。






「人の顔、じっと見ておいて。

それはないだろ?」






篤司君は、

持ってたペンを片手で回しながら言った。







篤司君には、敵わないなぁ。



私は、本当の感情がバレない様に

なるべく笑顔で言った。






「あの

…篤司君って、歌詞が書けてすごいなぁ。

って、思ってました。



私には、ちっとも、浮かばないから。」






”私は、何もわかってないから。”


本当は、そう付け加えたかった。


そんな私の話を聞いて、


篤司君は、天井を見上げて言った。