お酒が好きなんですと言う、彼女は29歳で看護師をしているという。

僕は探偵という、限りなく実体の知れない、一般の人にとっては、

ほぼフィクションな稼業で糊口を凌いでいる。

僕とこのビッチが出会ったのは、とあるバーだった。

探偵らしくバーでギムレットでも一杯やりたくなったのだ、

というのは架空の話で、本当は、親から継いだこんなヤクザな仕事を辞めて、

真剣に将来のことを考えねばなぁ、嫌だなぁと思って、昼間駅前のハローワークに行き、

三流私大卒、文系、30歳、前職探偵、英検準2級という輝かしい経歴のこの僕が、

仕事など選べる立場であるはずもなく、あってせいぜい、不動産の営業だとか、生命保険の営業とか

とにかくブラック臭が漂う仕事しかなく、しかもその仕事にすらありつけるか微妙なところであり

楽に生きていきたい、労働は卑しいものだという、思想が根底にある僕は

現実を知って打ちひしがれ、ヤケになって、入ったこともないバーで1人で飲みたくなったのだ。

そこで出会ったのが、この腐れビッチである。

皆さんに教えてもらいたい、こういう思わせぶりな女の心理を。

LINEで「○○さんの背中、いい匂いがしましたぁ♡」とか

「○○さんの教えてくれた本、とっても感動して何度も読み返しちゃいましたー☆」

とか送ってきて、3度目のデートの終わりに

「付き合ってくれないかな」と告白した僕に、蔑むような目で、

「あ、私、彼氏いるんで、無理でーす」と宣ったこの可愛い女の心理を。