「俺はその日バイト入れてるんでパスです」


「……いいの?」


うわあ、真冬くんの顔が般若みたいになった。

古川先輩も反応が楽しいからってそこまで煽らなくても……。この2人と一緒にいるとぴりぴりした雰囲気のせいで背中の冷や汗が止まらなくなるんだから、もう少しくらい表面上は仲良くして欲しい。

「何かあるんですか」

「んー、俺にとってはないけど、伏見くんにとってはとっても関係のあること、かな」

「遠まわしに俺のことからかってるんですか。殺しますよ」

「ストップストップ。怒らない怒らない。ただねえ、たぶんいかないときっと後悔すると思うよ?」

「……」

ふいにちらりと古川先輩が私のほうを見て、柔らかく微笑む。

その視線に真冬くんも気付いたらしい、思案顔で黙りこくる。一秒、二秒、と沈黙が私たち3人の中に流れた。そして、長い長いため息をついた後、真冬くんが口を開いた。


「いいですよ」


まったく了承しているようには見えない表情なんですが。


「決まり。今日は数人で打ち合わせだから、一緒にコミュニティセンターまでついてきてくれる?」


ぱちん、と古川先輩が手を叩き合わせてとても愉快そうに笑うのが、印象的だった。