「うちの市内で毎年やってる会で、市内の高校2校が選出されてやるのが恒例なんだ。毎年その役回りが代わりばんこでやってて、今年はうちともう1校が選ばれたんだよ」

「ほう」

「開催は12月25日。今年はステージで演劇をしようって話になってるんだけど、」

そこで言い惑う古川先輩。
そして頬を掻きながら、困ったように笑った。

「ちょっと脚本で行き詰っててね。せっかくだから文芸部の力を借りさせてもらおうと思い至ったわけ」

「……オリジナルの脚本をですか? それなら文芸部の私たちよりも演劇部のほうがよっぽど頼りになるような……」

「あーだめだめ。うちの高校の演劇部は悲劇専門だし、スプラッタ多めで過激だから。ステージ見に来る客層が大体お年寄りと家族連れなんだよ。それはさすがにまずいって。向こうの高校にはそもそも演劇部がないしね」 

「なるほど」

確かに聖夜に見るステージが血がどばどばとか私だってご遠慮願いたい。

「ま、あわよくば脚本の他にもしてもらいたいこと、いっぱいあるんだけど」

「身もふたもないですね」

ぺろっと舌を出してはにかんでみせる古川先輩。こういうお茶目な、それでいてちゃっかりしているところが憎めない人なんだよなぁ。


「で、伏見くんはどうする?」

それまで沈黙を守り続けていた真冬くんに向かって、古川先輩は首を傾げた。
眉をぴくりと動かし、口を固く閉ざした真冬くんが何やら深く考えるように、眉間に皺を寄せる。

「……何を企んでるんですか」

「何も企んでなんていないよ」

にっこりと、満面の笑みを浮かべる古川先輩をうん臭そうに真冬くんが目を細めた。
相変らずこの2人の仲は悪いようだ。どちらかと言えば、真冬くんが一方的に嫌っているだけだけど。

真冬くんは手をひらひらと振って、だるそうに言う。