「それは大丈夫です。一応、古川先輩に連絡しといたんで、古川先輩が早見先輩と一緒に荷物も回収して、一回キルシェに来てくれるって話つけときました」
「……」
「どうせ先輩のことだから、気が回らないと思って」
「ご名答」
「ほら、そうと決まったらさっさと行きますよ」
真冬くんが離していたほうの私の手をまた繋ぐと、さっきよりも小さな歩幅で歩きはじめる。
それが私に合わせてくれているのだと気付いたとき、また口が緩みそうになる。まったくこの後輩は。意地悪なんだか優しいだか。
忍び笑いをしながら、半歩前を歩く真冬くんの背中を視線だけ追い掛ける。
……あ、まただ。なんだろう、どうしたんだろう。すごくどきどきする。繋いでいる手だけが、やけに熱い。
歩いている途中、真冬くんが思い出したかのように、あと声を上げた。
「ついでに店長に小町先輩の安否知らせないといけません」
「そだね」
「店長の中の小町先輩はかなりの重傷を負って病院に緊急搬送されてるので」
「真冬くん話盛りすぎじゃないか」
「死ぬほど心配してると思うんで、ちゃんと謝ってくださいね」
「私!? 私だけが悪いの!?」
「当り前じゃないですか」
「ジーザス!」
「これに懲りたら、合コンなんて行かないことです」
「……あー、大丈夫。もう一生行きたくない」
「それはよかった」
安心したように笑った真冬くんの横顔を見て、また心臓が大きく鼓動を打つ。
ど、どうしちゃったんだ……私。