後藤さんは涙ぐんでいた。
あの子…自分を可愛く見せる方法よく知ってるな……。
ぼんやりと考えつつ、光輝にも目を向ける。
光輝は相変わらず驚くほど無表情だった。
急に抱き着かれたせいか、行き場のない両手が万歳状態で固まっている。
そして、光輝がそれを後藤さんの背中に回すことはなかった。
光輝…後藤さんに何て言うのかな。
空気的に告白を断るのは分かるけど…気になる。
そして、光輝が答えようと口を開きかけたのを固唾を飲んで見守っていた時だった。
……ん?
光輝が言葉を発する前に、何を思ったのか、こっちに目を向けてきた。
そしてあたしに気づく光輝。
絡み合う視線。
光輝はあたしのことを完全に認識すると、驚いたように目を見開いた。
ま……ま・ず・い!!
冷や汗が背中を伝う。
これはピンチだ……早く逃げなきゃっ!!
とっさに判断したあたしは屋上に背を向けて、慌てて逃げ出したのだった。
それを光輝が呆れたように見つめているのにも気づかずに。

