椋は午後の授業を終え約束通りに校門に向かった。
既に村木は校門の外側で何人もの生徒を見送る様に立っていた。
声を掛けれないので、椋は目配せをして村木の前を通り過ぎた。
村木は椋の意図をわかってか黙って、椋のあとをついて行く。
同じ学校の生徒まばらになった頃、椋は口を開いた。
「さて、まずは偶然に前妻と会った所でも行きますか!?」
「×××町の喫茶店でお茶をしたんだ。あいつが穴場の喫茶店があるからって…あと、たまに行くのって言っていたんだ。」
「じゃそこに行きましょう。」
一人と一霊は並んで喫茶店に歩みを進めた。
暫くして、ちらほらといた人はまばらになり、いつの間か周りに人は居なくなっていた。
「本当にこんな所に喫茶店なんかあるんですか?」
「あぁ確かもう少し行った所にあったはずなんだが…すまない、私も一回しか行ったことがない場所だから…。あっあった。椋くん、あそこだよ。」
村木が指差した先にレトロな雰囲気を漂わせている喫茶店がポツリとあった。
「たしかに穴場ですね…。」
「まぁ若い子には、ちょっと古い感じかもしれないね。」
「じゃ入って待ってみますか。」
「いいのかい?入りづらくないかい?」
「いえ、僕は小洒落たカフェより、こういった場所の方が好きですので、ご心配なく。」
椋は木で出来たドアを引いた。
ドアの上に付けられたベルがカランコロンと鳴り響き来店を知らせた。
店内は落ち着いたオレンジ色の照明とクラシックが流れている。
コーヒーの香りが鼻をくすぐり、なんとも言えない幸福感に満ちた。
カウンターから初老の男性が「いらっしゃい。」と、言ったが椋を見るなり少し驚いた表情を見せた。
椋は店内が見渡せる一番屋上の席に座りメニューを開いた。
メニューには多くのコーヒーが書かれてあり、名前の横には国旗の絵があった。
「何にします?」
先程のお爺さんが水とおしぼりを、テーブルに置いた。
「じゃカイザー・メランジェお願いします。」
椋はオーストリアの国旗が書かれたコーヒーを頼んだ。
「はい、卵使ってるけど大丈夫かい?」
「はい、砂糖は少なめでお願いします。」
椋の注文に主人はニッコリ頷きカウンターの向こう側に行った。
「コーヒーに詳しいのかい?」
向かいに座った村木が聞いてきた。
「少し…好きなので。」
「じゃここは椋くにはよかったんだね。」
「はい、これからも来ると思います。」
「そうか、それはよかった。」
程なくして椋が注文したコーヒーが運ばれ、コーヒーの香りが周りにを包んだ。
「ここに来た時は何時頃に来ました?」
「今と変わらなかったかな…。」
「平日ですか?」
「うん…確か木曜だったかな…5時過ぎまで此処に居て、夕飯の支度があるからって帰ったんだ。」
「そうですか…じゃ今日来るかもしれませんね。」
「どうして?」
「会った場所は、ここからどれくらい離れてますか?」
「え…っと、1キロもないかな…。」
「じゃやっぱり、その日も此処に来る途中で村木さんに会ったんだとしたら、今日は偶然にも木曜日です。もし、木曜日が此処に来る日だと決めてたとしたら…。」
「そうか!椋くんの言う通りかもしれない!あいつは昔っから気に入った店には毎週足を運んでたんだ!」
椋はニコッと村木に微笑んだ。
「では、僕は本を読むので来たら声掛けて下さい。」
「えっ?」
「僕は村木さんの前妻の方を知りません。なので村木さんが教えてください。」
「いや、そうじゃなくて…。」
「あぁこれですか?」
片手に持たれた本を少し動かした。
村木はその本を見て頷いた。
「だってずっと話すのも周りから見たら僕だけが変人になってしまうでしょ。だからです。」
村木は納得してないような顔で納得した。
暫くして椋は気になっていた事を聞いた。
「前妻の方のお名前何ですか?」
椋は本で顔を隠したまま小声で話しかけた。
不意に聞かれて村木は驚いたのか頬づえをついていた手を滑らせた。
「あっ薫っていうんだ。」
「薫さん、じゃこれからはそう呼びます。ずっと前妻って言うのも変ですから…。」
「それもそうだね…。」
それから7時ぐらいまで待ってみたが、結局その日薫は喫茶店には現れなかった。
その次の木曜日も、そのまた次の木曜日も薫に出会う事はなかった。
既に村木は校門の外側で何人もの生徒を見送る様に立っていた。
声を掛けれないので、椋は目配せをして村木の前を通り過ぎた。
村木は椋の意図をわかってか黙って、椋のあとをついて行く。
同じ学校の生徒まばらになった頃、椋は口を開いた。
「さて、まずは偶然に前妻と会った所でも行きますか!?」
「×××町の喫茶店でお茶をしたんだ。あいつが穴場の喫茶店があるからって…あと、たまに行くのって言っていたんだ。」
「じゃそこに行きましょう。」
一人と一霊は並んで喫茶店に歩みを進めた。
暫くして、ちらほらといた人はまばらになり、いつの間か周りに人は居なくなっていた。
「本当にこんな所に喫茶店なんかあるんですか?」
「あぁ確かもう少し行った所にあったはずなんだが…すまない、私も一回しか行ったことがない場所だから…。あっあった。椋くん、あそこだよ。」
村木が指差した先にレトロな雰囲気を漂わせている喫茶店がポツリとあった。
「たしかに穴場ですね…。」
「まぁ若い子には、ちょっと古い感じかもしれないね。」
「じゃ入って待ってみますか。」
「いいのかい?入りづらくないかい?」
「いえ、僕は小洒落たカフェより、こういった場所の方が好きですので、ご心配なく。」
椋は木で出来たドアを引いた。
ドアの上に付けられたベルがカランコロンと鳴り響き来店を知らせた。
店内は落ち着いたオレンジ色の照明とクラシックが流れている。
コーヒーの香りが鼻をくすぐり、なんとも言えない幸福感に満ちた。
カウンターから初老の男性が「いらっしゃい。」と、言ったが椋を見るなり少し驚いた表情を見せた。
椋は店内が見渡せる一番屋上の席に座りメニューを開いた。
メニューには多くのコーヒーが書かれてあり、名前の横には国旗の絵があった。
「何にします?」
先程のお爺さんが水とおしぼりを、テーブルに置いた。
「じゃカイザー・メランジェお願いします。」
椋はオーストリアの国旗が書かれたコーヒーを頼んだ。
「はい、卵使ってるけど大丈夫かい?」
「はい、砂糖は少なめでお願いします。」
椋の注文に主人はニッコリ頷きカウンターの向こう側に行った。
「コーヒーに詳しいのかい?」
向かいに座った村木が聞いてきた。
「少し…好きなので。」
「じゃここは椋くにはよかったんだね。」
「はい、これからも来ると思います。」
「そうか、それはよかった。」
程なくして椋が注文したコーヒーが運ばれ、コーヒーの香りが周りにを包んだ。
「ここに来た時は何時頃に来ました?」
「今と変わらなかったかな…。」
「平日ですか?」
「うん…確か木曜だったかな…5時過ぎまで此処に居て、夕飯の支度があるからって帰ったんだ。」
「そうですか…じゃ今日来るかもしれませんね。」
「どうして?」
「会った場所は、ここからどれくらい離れてますか?」
「え…っと、1キロもないかな…。」
「じゃやっぱり、その日も此処に来る途中で村木さんに会ったんだとしたら、今日は偶然にも木曜日です。もし、木曜日が此処に来る日だと決めてたとしたら…。」
「そうか!椋くんの言う通りかもしれない!あいつは昔っから気に入った店には毎週足を運んでたんだ!」
椋はニコッと村木に微笑んだ。
「では、僕は本を読むので来たら声掛けて下さい。」
「えっ?」
「僕は村木さんの前妻の方を知りません。なので村木さんが教えてください。」
「いや、そうじゃなくて…。」
「あぁこれですか?」
片手に持たれた本を少し動かした。
村木はその本を見て頷いた。
「だってずっと話すのも周りから見たら僕だけが変人になってしまうでしょ。だからです。」
村木は納得してないような顔で納得した。
暫くして椋は気になっていた事を聞いた。
「前妻の方のお名前何ですか?」
椋は本で顔を隠したまま小声で話しかけた。
不意に聞かれて村木は驚いたのか頬づえをついていた手を滑らせた。
「あっ薫っていうんだ。」
「薫さん、じゃこれからはそう呼びます。ずっと前妻って言うのも変ですから…。」
「それもそうだね…。」
それから7時ぐらいまで待ってみたが、結局その日薫は喫茶店には現れなかった。
その次の木曜日も、そのまた次の木曜日も薫に出会う事はなかった。


