あの、真乃さんは元気だろうか?
木々が桜色に色付き始めたのを、教室の窓から見ながら椋はふと、思い出した。
「元気にしてるといいな…。」
「ん?なんか言った?」
クラスメイトと話してる途中で椋は別の事を考えていた。
「何?女?」
「バカか?!そんなのいねーよ!」
こんな風に笑い合ってると椋は何処にでも居る普通の中学生だった。
最近は自殺者のニュースは入ってこない。
よって椋のところに訪れる者も居ない。
今年の年末年始は穏やかに過ごせた。
椋はこの春、中学3年生になり、目の前に受験がちらついていた。
「お前高校決めた?」
「一応ね。」
「だよな…椋って頭いいもんな。」
「お前よりはね。」
「相変わらず素直だな〜。」
笑って椋の性格を受け入れてくれる村上 陸人の事が椋は思いの外好きだった。
陸人とは中学2年からの付き合いだけど、随分昔から知っている奴の様な気心しれてる雰囲気がはじめからあった。
「聞くってことは陸人はまだ決めてないの?」
「うん、まだ。したい事とかね〜もん。」
「でも高校は出ておくべきだと思うよ。今後の為にもね。」
「お前まで母ちゃんみたいな事言うなよ。」
そう言って陸人は頭を掻いた。
「でもその通りだと思ってるんだろ?」
「そうやって核心ついてくんのやめろって!」
椋と陸人は靴を履き替えると外に出た。
「どっか寄ってく?」
「いや、今日はまっすぐ帰るよ。」
「そっ。じゃまた明日な。」
「うん。じゃ。」
「おう!」
お互い軽く手を挙げ、校門を出たところで別れて歩きだした。
数歩歩いたところで大きな音が後方から聞こえ、直様何人かの悲鳴が聞こえて来た。
椋は踵を返し走り出した。
陸人に何かあったのかもしれないと思った。
けれど、事故現場に着いた椋は唖然した。
その場に座り込んでる陸人を見つけ近付いた。
「…椋……。」
陸人の体は硬直し、ガタガタと震えていた。
無理もない。目の前に上から人が降って来たのだから。
そこにあるモノはもう人ではなくなっていた。
まさか、自殺者をこの目で見る事になるなんて思ってもみなかった。
既に椋の目には自らの死体を見つめている彼女の姿が見えている。
それはとても違和感のある光景だった。
椋は陸人を抱え起こすと黙って歩き出した。
「椋…警察とか…いいのか?」
「いいんだよ。目撃者は他にも居たし、ただの自殺だから。」
「えっ、あぁ、そうなの?」
「うん、とにかく家まで送るよ。」
「お前平気なの?あれ見て…。」
「平気なわけないだろ。これでもうろたえてるよ。」
後ろに居る彼女を気遣って少し小さな声で言った。
見るところによると歳は20歳前後?
若い様にも見えるけれど、なんだろう?凄く疲れてる様な窶れてる様にも見える。
女性はずっと下を向いていて、自分の手を見つめ続けている。
手に何か握られているけれど、椋にはそれを確認出来ないでいた。
陸人を家で送って玄関のドアが閉まったのを確認すると、椋は改めて女性に向き直った。
「行きましょう。」
「あなたは見える人なのね…。」
意外と冷静に今あるべき事を受け入れているのだろうか?
「はい。僕には貴女が見えています。ですが、全ての方ってわけではないです。」
「どうゆうこと?」
「自殺した方だけです。それもこの世に未練のある方です。」
「未練……。」
彼女はまた手に握られている物を見た。
「はい、ですから貴女にもあるはずです。その未練ってやつが…既に心当たりあるんですね?」
「えぇあるわ…今もあの子泣いてるかもしれない…。」
「え??」
「私の赤ちゃん…。」
「赤ちゃん?!」
椋は驚いて、思わず大声を出してしまった。
通りすがる人達が椋だけを見て行く。
「赤ちゃんって、どうゆうことです?」
椋は声潜め怪訝な顔で質問をした。
「あのままだと私あの子を殺してしまいそうだった。」
「それって…虐待?」
「そうなりたくなかったから死んだのよ!!」
彼女は全身から絞り出す様な声で叫んだ。
「とにかく家に戻りましょう!」
椋は女性の手を引いて走り出した。
女性は椋に手を引かれ、顔を涙でグチャグチャにしながら走った。
木々が桜色に色付き始めたのを、教室の窓から見ながら椋はふと、思い出した。
「元気にしてるといいな…。」
「ん?なんか言った?」
クラスメイトと話してる途中で椋は別の事を考えていた。
「何?女?」
「バカか?!そんなのいねーよ!」
こんな風に笑い合ってると椋は何処にでも居る普通の中学生だった。
最近は自殺者のニュースは入ってこない。
よって椋のところに訪れる者も居ない。
今年の年末年始は穏やかに過ごせた。
椋はこの春、中学3年生になり、目の前に受験がちらついていた。
「お前高校決めた?」
「一応ね。」
「だよな…椋って頭いいもんな。」
「お前よりはね。」
「相変わらず素直だな〜。」
笑って椋の性格を受け入れてくれる村上 陸人の事が椋は思いの外好きだった。
陸人とは中学2年からの付き合いだけど、随分昔から知っている奴の様な気心しれてる雰囲気がはじめからあった。
「聞くってことは陸人はまだ決めてないの?」
「うん、まだ。したい事とかね〜もん。」
「でも高校は出ておくべきだと思うよ。今後の為にもね。」
「お前まで母ちゃんみたいな事言うなよ。」
そう言って陸人は頭を掻いた。
「でもその通りだと思ってるんだろ?」
「そうやって核心ついてくんのやめろって!」
椋と陸人は靴を履き替えると外に出た。
「どっか寄ってく?」
「いや、今日はまっすぐ帰るよ。」
「そっ。じゃまた明日な。」
「うん。じゃ。」
「おう!」
お互い軽く手を挙げ、校門を出たところで別れて歩きだした。
数歩歩いたところで大きな音が後方から聞こえ、直様何人かの悲鳴が聞こえて来た。
椋は踵を返し走り出した。
陸人に何かあったのかもしれないと思った。
けれど、事故現場に着いた椋は唖然した。
その場に座り込んでる陸人を見つけ近付いた。
「…椋……。」
陸人の体は硬直し、ガタガタと震えていた。
無理もない。目の前に上から人が降って来たのだから。
そこにあるモノはもう人ではなくなっていた。
まさか、自殺者をこの目で見る事になるなんて思ってもみなかった。
既に椋の目には自らの死体を見つめている彼女の姿が見えている。
それはとても違和感のある光景だった。
椋は陸人を抱え起こすと黙って歩き出した。
「椋…警察とか…いいのか?」
「いいんだよ。目撃者は他にも居たし、ただの自殺だから。」
「えっ、あぁ、そうなの?」
「うん、とにかく家まで送るよ。」
「お前平気なの?あれ見て…。」
「平気なわけないだろ。これでもうろたえてるよ。」
後ろに居る彼女を気遣って少し小さな声で言った。
見るところによると歳は20歳前後?
若い様にも見えるけれど、なんだろう?凄く疲れてる様な窶れてる様にも見える。
女性はずっと下を向いていて、自分の手を見つめ続けている。
手に何か握られているけれど、椋にはそれを確認出来ないでいた。
陸人を家で送って玄関のドアが閉まったのを確認すると、椋は改めて女性に向き直った。
「行きましょう。」
「あなたは見える人なのね…。」
意外と冷静に今あるべき事を受け入れているのだろうか?
「はい。僕には貴女が見えています。ですが、全ての方ってわけではないです。」
「どうゆうこと?」
「自殺した方だけです。それもこの世に未練のある方です。」
「未練……。」
彼女はまた手に握られている物を見た。
「はい、ですから貴女にもあるはずです。その未練ってやつが…既に心当たりあるんですね?」
「えぇあるわ…今もあの子泣いてるかもしれない…。」
「え??」
「私の赤ちゃん…。」
「赤ちゃん?!」
椋は驚いて、思わず大声を出してしまった。
通りすがる人達が椋だけを見て行く。
「赤ちゃんって、どうゆうことです?」
椋は声潜め怪訝な顔で質問をした。
「あのままだと私あの子を殺してしまいそうだった。」
「それって…虐待?」
「そうなりたくなかったから死んだのよ!!」
彼女は全身から絞り出す様な声で叫んだ。
「とにかく家に戻りましょう!」
椋は女性の手を引いて走り出した。
女性は椋に手を引かれ、顔を涙でグチャグチャにしながら走った。


