さっきみたお兄ちゃんとはまるで別人みたいだったから。


「……あたしはもう、帰れないから」


希彩ちゃんの意識は戻った。


きっと、時間が経って落ち着けば事故の事を周囲に話し始めるだろう。


そうなれば、もうあたしはおしまいだ。


「そっか。なら、ずっとここにいればいい」


お兄ちゃんが、ニコッと笑ってそう言った。


「何を言ってるの?」


「きっと、純白ならそう言うと思って準備もしておいたんだ」


嬉しそうにそう言うお兄ちゃんに、あたしはますますわけがわからなくなる。


「準備って、一体なにを……」


言いかけて口を閉じる。


今、一瞬視界に入ったドアに違和感があったからだ。


途端に嫌な予感が胸を渦巻き始める。