デートとは言えないデートを終えたあたしは、家へと戻ってきていた。


昨日行きたかったパスタ専門店に連れて行ってもらったものの、颯はやっぱり希彩ちゃんの話ばかりをしていた。


おいしいパスタを食べ終えて満足していたあたしだけれど、最後の最後で「おいしかったね。今度は希彩を連れて来よう」と言われ、気分は一気に冷めて行ってしまった。


家まで送るという颯の言葉を断り、あたしは1人で帰っていた。


もう日は沈んでいて家族全員が家にいる。


あたしは「ただいま」と、声をかけて玄関を開けた。


その時玄関に見慣れない靴がある事に気がついた。


男ものだけどお父さんの物でも、お兄ちゃんのものでもない。


お兄ちゃんの友達でも来ているのかもしれない。


パソコン関係の高校へ通っているお兄ちゃんは、時々友人を連れて来て部屋に籠っているのだ。


パソコンの何がそんなに面白いのかあたしには理解できないけれど、何かに熱中しているということだけは伝わって来た。


「純白、ご飯は?」


リビングには顔を見せず階段を上がろうとした時、お母さんがそう声をかけてきた。