dearest〜親愛〜

カッコいいしか言いようがない



でも本当にカッコいいのはここから…音楽が鳴り歌が始まる



いつ聴いても鳥肌が立つ



母の歌を始めて聞いたのは物心付いてからこんなにも透き通る声はそうそういない



そう言われ続けてきたのを俺は一番身近で聞いてきた



息子の俺ですらこの瞬間母親をただの歌姫にしか見えなくなる



「姫〜」


そう呼ばれる母


近くて遠いそんな存在に今だにこの人の息子だということを忘れてしまう



ライブも終盤にかかった時だった中央の辺が騒がしくなる



「ちょっと痛い」


「押さないでよ」


たまにある揉め事



「はーいみんな落ち着いて押したりせずにちょっと後ろに下がってください」


リーダーの那珂さんこと夕陽の親父さんが演奏を止めて叫ぶ



普段ならこれで落ち着くんだけど今日の客はそうはいかず揉めクチャになりだす観客たち



安全を考えて演奏は中止したまま事態は変わらず中央部分は揉め合いになっていた



「那珂」



親父が声をかけて那珂さんが言う



「残念だけど今日はこれで終了、ごめんね」


その声と同時に入り口が開くにもかかわらず出て行かない人たち



俺は今だに揉めてる中央に目をやる


そこに見えた小さなシルエット



「あのバカ」


人混みをかき分けて中央に突き進み



あのシルエットの人物の手を取りすぐさま入り口に向かい外に脱出する