『あの……櫻井さん、それはどういう意味ですか?』
『なぁ、百合。
百合も小原さんに聞きたいこと、あるだろ?
小原さんも百合に言いたいこともあると思う。
俺は百合と小原さんの二人がきちんと話し合うこと、必要だと思うよ。
ちゃんと話して、ちゃんとお互いの誤解を綺麗さっぱりなくすことがいいと思う。
俺、ちょっと席を外すから、ちゃんと小原さんと話し合いな?』
櫻井さんはそう言うと、百合の顔を優しく見つめた。
百合はそんな櫻井さんの言葉の意味を理解したのか、何かに納得したような顔で頷いた。
俺は櫻井さんの言葉の意味も分からず、ただ一人、櫻井さんとバカ女の顔を交互に見つめていた。
そんな俺をよそに、櫻井さんはイエス・キリストの銅像から離れ、どんどんこちらへと歩いていくる。
どんなに俺に近づいてきても顔色一つ変えることもなく、櫻井さんはただ優しく微笑んでいた。
それは俺の目の前に来ても同じで、ただ俺の横を通り過ぎるとき、俺の真横で立ち止まった。
『櫻井さん、俺、今なら百合があなたをとても大事にしていた理由が分かるんです。
あなたは見返りなど求めず、ただ、ただ百合の幸せだけを願っていました。
その為に自分自身が追い詰められても、傷ついても、自分からその場を離れる決断を迫られても、それでもあなたは百合の幸せだけを願い続けてきた。
自分のことよりも誰かの幸せを願える、それは温かくて、優しい愛なんだと思います。
人はそんな愛に触れたとき、安心感を覚え、そしてその場所を失いたくないと思うんだと思います。
だから百合もあなたのくれる無条件の愛を失いたくなかったんだと思います』

