『なぁ……映画、観に行かないか?』





俺は静かな声で、そう言葉にした。






『………映画?』






『そ、映画。こんなところでいくら泣いたって前には進めねーよ。

 なら、くだらなくてもいい、少しずつ笑って、ゆっくり前を向いていこうぜ?

 俺、お前の愚痴を聞く友達ってだけじゃなくて、お前をどん底から這いあがらせるのを手伝う友達になりたいわ』






俺の想いなんてものに一生気付かなくても構わない。


俺の気持ちに気付く必要もない、だけどお前の笑った顔だけは見せてほしい。


お前がどん底から這い上がる、その手伝いを俺にさせてほしい、そう思うんだ。










『………私には勿体ないよ……小原みたいな友達……。

 私、彼氏には恵まれなかったけど、神様に感謝する。

 小原みたいな、すっごい!いい奴と友達にさせてくれたこと、それだけは本当に感謝する!』





バカ女はそう言って、真っ暗闇から必死で俺たちを明るく照らそうとする星たちを眺める。



その先には、バカ女が言うとこの神様がいるのだろうかー……




もし、そこに神様がいて、今この瞬間も俺たちを見ているなら、俺はきっと、あなたを憎むだろうー……








『小原、ありがとう!

 私、小原のこと、大好き!』





友達だから言える、その言葉。


友達だと思っているからこそ、安心して言える、その言葉。




それでもバカな俺はその言葉が無性に、非常に嬉しくてたまらなくて、そしてすっげー泣きたくなるんだ。





もし、彼女が俺を異性として、恋人としてそう言ってくれたのなら、俺はどれほど幸せを味わえるだろうかー……