『小原君、本当にありがとうね。
あなたが息子達の担当さんで本当に良かったわ』
『いえ。あれは坂巻さんのご提案で、坂巻さんがお時間を調整してくれたからこそ出来たことです。
本当にお忙しい中、お時間を調整して頂きありがとうございました』
いつもより少し柔らかい彼の声が耳に届く。
“お客様だから”、だからそんなにも優しい声で話す。
『ううん。息子たちの我儘だけでなく、私の我儘まで嫌な顔一つ見せないで付き合ってくれて本当に嬉しかったわ。
小原君が沢山付き合ってくれたんだもの。
それに刺繍糸やビーズも毎回可愛らしいのを選んできてくれて……あの子が気にいってくれるといいんだけどね…』
二人のやり取りが気になったあたしはそっと顔だけを突き出す。
すると坂巻さんは手を頬に添え、少し困った顔をされているのが見えた。
『大丈夫ですよ。
きっと絵里さんもあのドレスを見たら気にいって頂けますよ』
彼はそう言うと、今度は優しい笑みを坂巻さんに向けた。
“あのドレス……?”
小原が発した「ドレス」という単語ーー
そして、坂巻さんが言った「刺繍糸」と「ビーズ」--
(もしかして新郎のお母さんが新婦にドレスを作ってる……?)
(それで小原も担当だから手伝ってる……の?)

