私は、猪の側に行って手を合わせた。
それを真似るように、エーラもシオン様も
一緒に手を合わせる。
「じゃあ、ご飯を作りましょうか」
私がそう言うと、二人は頷いた。
「さばくのなら、俺がやるよ」
とエーラが言う。
それに対して、
「意外…」
と返すと、エーラは
「なんで?」
という。
「だって、ずっとシオン様の付き人だったんでしょう?なのにさばき方を知ってるなんて」
と聞くと、エーラは
「随分前に市場の肉屋の主人に教えて貰ったんだ。」
と言った。
でも…普通、城で付き人をしている人には
動物をさばく技術など、いらないはずだ。
…エーラは、こうなる事を予想していたのかも
しれない…
と、私は思った。
先を読んで、どんな事があっても
シオン様を死なせまいと
する姿勢は、とても16歳の少年とは
思えなかった。
「…エーラはすごいのね」
と私は呟くように言う。

