この子が気に入ってくれるような名前…
必死に頭を働かせて考えたけれど、
なかなかいい名前が思いつかなかった。
色々と考えているうちに、山を一つ越えて
辺りが段々と暗くなってきていた。
「今日はこの辺に泊まりましょうか」
と、エーラがシオン様に言うと、
シオン様は、
「野宿というやつだな?」
と楽しそうに言った。
野宿と聞いて、私は昔の事を思い出した。
…昔は、麒麟様と共に野宿をしたものだった。
あれは、何年前のことだろう…
そんなことを考える。
「フィアネ、そういえば、なにか食料あった?」
という風にエーラに聞かれて、
「野草ならとりあえずありますけど…この子の餌になるようなものがないかも…」
と困っていう。
明るい内に、なにか食料を調達しておけば
よかった…と、少し後悔する。
すると、シオン様が急に声を潜めて、私に
「弓矢を貸してくれ」
と言った。
私は頷いて、シオン様に弓矢を渡す。
すると、シオン様迷わず一点を見つめて
弓の弦を弾く。
そして矢を放つと、それは大きな猪に命中
していた。
「…すごい」
あんな一瞬でこの暗闇の中から猪を見つけ出し
て、それを一撃で仕留めたというの?
そんなの、相当弓を扱いなれていないと
不可能なはずだった。
「夕飯にしようか」
と言った時のシオン様の瞳は、金色から
水色へと変わった時だった。

