だが、ザクッと生々しい音がしたのに


全く痛みがやってこない。



目を開けてみると…



私もグオンも目を見開いて固まった。



私の目の前に立っていたのは黒髪の青年だった



青年の肩には短刀が深々と刺さり、


肩からは血が溢れでた。




「エーラ…!?」


私は目の前の血を流している青年の名を叫んだ




エーラは幼い頃から私に仕えてくれている


従者だ。



「シオン様!ご無事ですか!?」


自分の傷など気にせず短刀を跳ね除け


こちらを振り返るエーラの姿に、


出そうになる。


エーラはシオンにとって、従者という関係

だけではなかった。




立場上、友などできず、グオンからも


好かれてはいなかったシオンのたったひとりの


友と呼べる存在だった。