ここからでは、声が聞こえても、


二人の表情は見えない。




「お前は本当に不思議だ。独りでこの村を役人たちから守れるほどの力を持ちながら、面倒なことにも嫌な顔一つせずにこの村のために尽くしてくれた。力ある者は、ほとんど皆人を見下すために使ってしまうというのに」



その言葉に、ライアは何も答えなかった。





しばしの沈黙が、夜の闇に降りる。



そよそよと吹く風はひどく冷たく、


火の届かない私の体はだいぶ冷えきってきて


いた。





「何にしても、お前が自分で物事をはっきりと決めたのは初めてだ。行きなさい」



沈黙を破ったおじいさんの言葉にも、


ライアの返答は聞こえなかった。




ただ、かすかに、鼻をすするような音が


聞こえた気がした。





「お前はこの村の勇者だなぁ。わしが責任をもって語り継いでやろう。この村の青髪の勇者の話を」


笑いを含んだおじいさんの言葉に、



「…それは…やめて…ください」



と、ライアが掠れた声で返したのを聞き届けて


から、私は冷えきった体を両手で


抱きながら家屋へと戻った。