その小さな言葉は、私をはにかませるには
十分なものだった。
「フィアネ?」
遠慮がちな声で名を呼ばれ、私はそちらに
視線を向ける。
するとそこには、シオン様が山菜がたくさん
入った袋を持って、立っていた。
「何かいいことがあったのか?」
シオン様はそう笑顔でこちらに聞く。
「あ、いえ…」
なんと答えたらいいのかわからず、私は少し
あいまいに答えた。
ライアが私たちにちゃんと付いてきてくれると
いうことを、私の口から言うのはなにか
違う気がしたから。
「それよりシオン様、その山菜は?」
私が山菜の袋に視線を移してそう聞くと、
「あぁ、そろそろ湯が湧いた頃だから、昼間に村の子供たちが採ってきてくれたものを煮るのを、ライアに手伝ってもらおうと思ってな」
シオン様はそう言いながらライアの居る
家屋を指さした。
「そうだったんですか。ライアは快く手伝ってくれると思いますよ」
私がそう返すと、シオン様は
「あぁ、ライアは優しく面倒見の良い性格をしているからな」
と少しばかり嬉しそうに呟いた。

