すると次の瞬間、シオン様は頭の上の
クオンを優しく両手で包むように掴むと、
「すごいな、クオン、本当にお前はなんでもできる」
と笑顔でクオンに言う。
しかし、なぜかクオンは驚いたように羽を
ばたつかせると、ばちーんとシオン様にビンタ
をして飛び退いた。
ふん、とでも言うかのように顔を背けたクオン
に、頬を抑えて
「なぜ?」
と言うシオン様のやり取りが面白くて、私は
少し口元が緩んでしまっていた。
「ところで…その獲物が全てクオンがとったものだというのはわかったが…エーラたちは三人も居ながら何をしていた?」
そんな質問がシオン様から飛んでくるまでは。
「あ…えっと…」
私が口ごもる中、エーラは申し訳なさそうな
情けなさそうな声で、シオン様に事情を話した
「…それでそんなに砂まみれだったのか…」
シオン様のその言葉に、私も少し俯く。
割り当てられた仕事を全くできなかった
のだから…。
この時ばかりは、ゼンも憎まれ口を叩かずに、
ただ静かに…いや、腕は組んでいるけれど…
シオン様の言葉に耳を傾けていた。
「本当に無事でよかったぞ、三人とも。」
けれど次の瞬間、シオン様の口から飛び出した
のは、不甲斐ないという言葉ではなく、
心からホッとしたような声でのこの言葉だった

